病院におけるED治療方法の代表といえば、ED治療薬の処方です。
ED治療薬の効果は高く、使用した人の約8割がED改善効果を実感したとするデータもあります。
ただ、持病によりED治療薬を飲めない方や、ED治療薬が効かない方がいることも事実です。
こうした方は、EDを治すことができないのでしょうか。
ED治療薬が飲めない、効かない場合の治療方法を調査しました。
ED薬が飲めない人の治療方法
ED治療薬を飲めない人のED治療法として、以下の2つがあげられます。
- プロスタグランジンE1陰茎海綿体注射
- 陰圧式勃起補助具
各治療方法の詳細を、順番に見ていきましょう。
プロスタグランジンE1陰茎海綿体注射
「プロスタグランジンE1陰茎海綿体注射(以下、PGE1陰茎海綿体注射)」は、ペニスに薬を注射するED治療です。
ペニスに直接注射を打つことにより一時的な勃起を起こす、というのがこの治療方法の大まかな内容。
PGE1陰茎海綿体注射には、以下3つのメリットがあります。
- 持病でED治療薬を使えない方でも利用可能
- 心因性EDにも有効
- 一度指導を受ければ自分で行える
糖尿病や心臓病、高血圧などによりED治療薬を飲めない方でも、PGE1陰茎海綿体注射ならば利用できる場合があります。
PGE1陰茎海綿体注射の薬剤は血液に回らないため、持病に影響を与えません。
PGE1陰茎海綿体注射は、心因性ED(心理的要因で生じるED)を患っている方にも有効です。
PGE1陰茎海綿体注射を行うと、性的興奮とは無関係に勃起します。
つまり、心理的要因で性的興奮が妨げられている方でも、勃起を得られるのです。
自分で行えることも、PGE1陰茎海綿体注射のメリット。
医師の指導を受けさえすれば、陰茎海綿体への注射は患者自身で実施できます。
ちなみに、PGE1陰茎海綿体注射に使用する注射針は、太さが約0.3mmと極細。
注射にともなう痛みは、チクリとする程度です。
以上のように、PGE1陰茎海綿体注射の3つのメリットは、EDに悩む方にとってうれしいものばかり。
ただし、PGE1陰茎海綿体注射には、デメリットも3つあります。
- 自己注射は国内未承認
- 費用が高額
- 重篤な副作用が生じる可能性がある
自己注射は国内未承認
先に述べたように、PGE1陰茎海綿体注射は患者が自分で行えます。
ただし、患者自身による陰茎海綿体への注射は、国に承認されていません。
患者によるPGE1陰茎海綿体注射は、医師と患者の自己責任で行う必要があるのです。
このことから、PGE1陰茎海綿体注射を受ける病院は、慎重に選ばなければなりません。
より具体的にいうと、PGE1陰茎海綿体注射を受ける病院には、学会に認定された性機能専門医のいる医院を選ぶ必要があります。
性機能専門医のいる医院であれば、研究の一環という形で陰茎海綿体注射を受けることが可能。
また、自己注射の方法を的確に指導してもらえますし、トラブルが生じても速やかに対応してもらえます。
次に、費用の高さについて。
費用が高額
PGE1陰茎海綿体注射にかかる費用は、1回分あたり1万円前後とかなり高額です。
注射1回分の費用には、薬剤とそれを希釈する生理食塩水、注射器などの購入費が含まれます。
ちなみに、PGE1陰茎海綿体注射の持続時間は2〜3時間程度です。
これだけの時間があれば、少なくとも1〜2回のセックスは十分可能なはず。
とはいえ、セックス1〜2回につき1万円の治療費というレートは、高額と言わざるを得ません。
こうしたコストの高さから、PGE1陰茎海綿体注射は利用できる人が限られるED治療方法だといえます。
重篤な副作用が生じる可能性があることも、PGE1陰茎海綿体注射のデメリットです。
副作用の一例としては、持続勃起症にともなうペニスの損傷があげられます。
PGE1陰茎海綿体注射の副作用について詳しくは、後述する解説をご覧ください。
なお、PGE1陰茎海綿体注射の初回の治療では、医師が注射を行い勃起が生じることを確認します。
医師に勃起を見せなければならない点も、PGE1陰茎海綿体注射のデメリットといえるかもしれません。
陰圧式勃起補助具
「陰圧式勃起補助具」は、擬似的な勃起を生じさせるED治療用具です。
陰圧(容器内の圧力が外部より低い状態)を利用して血液をペニスに集め、勃起と同じ状態を人工的に作り出す、というのがこの治療用具の仕組み。
正式な陰圧式勃起補助具としては、厚生労働省に承認された「VCDカンキ」があげられます。
VCDカンキを構成するパーツは、プラスチック管、真空ポンプ、アダプター、ゴムパッキングの4つ。
これに潤滑クリームを加えた計5つの道具を用いて、擬似的な勃起を生じさせます。
VCDカンキの大まかな使用手順を見てみましょう。
- VCDカンキの各パーツを組み立てる
- VCDカンキ全体とペニスに潤滑剤を塗る
- プラスチック管にペニスを入れる
- 真空ポンプを操作する
- 陰圧により勃起するのを待つ
- ゴムパッキング以外のパーツを取り外す
VCDカンキの装着には、少しコツが要ります。
まず重要なのは、潤滑剤を多めに使用すること。
潤滑剤を多く塗ることにより、VCDカンキと体との密着が強まり陰圧を起こしやすくなります。
真空ポンプの操作にも、少しコツが必要です。
1度真空ポンプを操作したら、血液がペニスに集まるのを待ちます。
待ち時間は10〜30秒ほど。
使用する人により、最適な待ち時間は異なります。
真空ポンプの操作と待ち時間を繰り返すのが、VCDカンキで硬い勃起を起こすためのコツです。
以上のコツを守ってペニスが勃起したら、ゴムパッキング以外のパーツを外してセックスを行います。
ゴムパッキングを装着している間は、勃起を持続させることが可能です。
ただし、ゴムパッキングを装着できる時間は、最大で連続30分まで。
30分を超えて装着を続けると、ゴムパッキングの締め付けによりペニスがダメージを受ける可能性があります。
このため、VCDカンキを使ったセックスは、30分以内に終わらせなければなりません。
短時間しか使用できない点は、VCDカンキのデメリットだといえます。
VCDカンキのデメリットは、時間制限だけではありません。
器具を使ってペニスを勃起させる作業は、どうしてもムードを損ないます。
VCDカンキでペニスを勃起させ、30分以内にセックスを済ませるという行為は、長年連れ添ったパートナーでなければ受け入れてもらえないかもしれません。
こうした点も、VCDカンキおよび陰圧式勃起補助具のデメリットだといえます。
それぞれの治療法に副作用はないの?
PGE1陰茎海綿体注射および陰圧式勃起補助具には、ED治療薬のような副作用はありません。
ただし、副作用が全くないのかというと、答えはNOです。
PGE1陰茎海綿体注射と陰圧式勃起補助具がもつ副作用を、順番にチェックしていきましょう。
プロスタグランジンE1陰茎海綿体注射
PGE1陰茎海綿体注射の主な副作用として、以下の5つがあげられます。
- 持続勃起症
- 陰茎痛
- 海綿体線維化
- 不整脈
- めまい
上記のうち、とくに注意が必要とされているのが、先にも触れた持続勃起症です。
持続勃起症とは、4時間以上連続して勃起が続く状態のこと。
この状態が続くと、陰茎海綿体への酸素の供給が滞り、最悪の場合ペニスが壊死してしまいます。
海外の報告によると、PGE1陰茎海綿体注射により持続勃起症が生じる確率は6%。
高い確率で起こるわけではないものの、持続勃起症が発生した場合は専門医による緊急処置が必要です。
しかしながら、専門医が在籍しないにもかかわらず、「ICI療法」としてPGE1陰茎海綿体注射を行うクリニックが増えつつあります。
こうしたクリニックでPGE1陰茎海綿体注射を受けることは、高い危険性をともなうため避けたほうが賢明です。
個人輸入したPGE1陰茎海綿体注射を使用する人もいるようですが、このような行為は論外です。
危険極まりない行為なので、絶対に避けてください。
PGE1陰茎海綿体注射はリスクの高い治療方法であり、ED治療薬が効かない方のみを対象に行われます。
気軽に利用できるED治療ではない、という点は押さえておきましょう。
陰圧式勃起補助具
陰圧式勃起補助具の主な副作用には、以下の5つがあげられます。
- 陰茎痛
- 陰茎のしびれ
- 皮下出血
- 射精障害
- 冷たい勃起
上記のうち「冷たい勃起」以外の副作用は、ゴムパッキングの不適切な使用が原因で生じます。
ここでいう不適切な使用とは、潤滑剤の塗布が不十分な状態での使用や、サイズの合わないゴムパッキングの使用のこと。
とくに注意したいのが、サイズの合わないゴムパッキングの使用です。
「VCDカンキ」の場合だと、1セットに大、中、小3種類のゴムパッキングが含まれます。
各ゴムパッキングは内径が異なるため、自分のペニスに合うものを選んで使用しなければなりません。
誤って内径の小さすぎるものを使用すると、強い締め付けによって皮下出血や陰茎痛、ペニスのしびれなどを起こす可能性があります。
ちなみに、ゴムパッキングの内径は小が18mm、中が19mm、大が20mmです。
次に、冷たい勃起について。
陰圧式勃起補助具の使用中は、ゴムパッキングによってペニスの血流が少なくなります。
これにより、ペニスの表面温度が低下するのが冷たい勃起です。
冷たい勃起が生じても、ゴムパッキングを外して温度が戻るようであれば問題ありません。
ただ、セックスは冷たい勃起の状態で行うことになるため、パートナーが不快に感じる場合があります。
以上の副作用のほかにも、陰圧式勃起補助具には注意点があるので述べておきましょう。
- 使用禁忌がある
- ペニスのサイズによっては使用できない
- 装着したまま眠ると危険
陰圧式勃起補助具には、使用禁忌があります。
抗血液凝固物質療法を受けている方や、鎌状赤血球性貧血の既往歴をもつ方などは、陰圧式勃起補助具を使用できません。
ペニスに傷や炎症のある方や、重い多発性硬化症を患っている方の陰圧式勃起補助具の使用も禁忌です。
また、ペニスのサイズによっては、陰圧式勃起補助具を使用できません。
VCDカンキの場合だと、勃起時の外周が13cm、長さ16cmが利用できるサイズの限界です。
このほか注意したいのが、陰圧式勃起補助具を装着した状態での睡眠。
ゴムパッキングの締め付けが長時間続くことにより、ペニスの組織が損傷する恐れがあります。
極度に疲れているときや泥酔しているときなど、セックスの後に寝入ってしまいそうなときは、陰圧式勃起補助具を使用しないほうが賢明です。
まとめ
ED治療薬が使えない方や効かない方も、ED改善を諦める必要はありません。
本文で解説した治療法は有効性が確認されていますし、近年では「ED治療機」を使う新しい治療方法も登場しています。
まずはお近くのクリニックで、ED治療について相談してみてはいかがでしょうか。